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最高裁判所第一小法廷 昭和36年(オ)201号 判決 1965年5月27日

上告人

天野一二

代理人

藤江忠二郎

早川浜一

被上告人

早河としを

ほか六名

代理人

磯崎良誉

竹下伝吉

山田利輔

主文

一  第一審判決添付第一目録記載の物件に関する部分につき、本件上告を棄却する。

二  第一審判決添付第二目録記載の物件に関する部分につき、

(一)  上告人ならびに被上告人天野みな、同藤田あい、同村木きよ、同中村ふて、同佐藤ことおよび同近藤つぎの間において、原判決を破棄する。

(二)  上告人および被上告人早河としをの間において、

(1)  上告人の共有持分確認を求める部分について、原判決を破棄する。

右部分につき被上告人早河としをの控訴を棄却する。

(2)  被上告人早河としをの共有持分確認を求める部分について、原判決を破棄し、第一審判決を取り消す。

右部分につき本件訴を却下する。

三  訴訟の総費用はこれを一〇分し、その一を被上告人早川としをの負担とし、その一を被上告人天野みな、同藤田あい、同村木きよ、同中村ふて、同佐藤ことおよび同近藤つぎの平等負担とし、その余を上告人の負担とする。

理由

上告代理人早川浜一の上告理由第一点ないし第四点について。

原判決によれば、原審は、本訴中第一審判決添付第一目録記載の物件に関する部分を通常の共同訴訟と解し、右部分についてなされた第一審判決に対しては被上告人早河としをのみが訴訟したのであるから、同被上告人を除くその余の被上告人らについてはこれを審判の対象としていなかつたのであるが、本訴中第一審判決添付第二目録記載の物件に関する部分を必要的共同訴訟にあたるものと解した結果、被上告人早河としをの控訴によりその余の被上告人ら全員につき控訴の効力を生じたものと判断し、右部分につき被上告人ら全員を控訴当事者として審理判決していることが明らかである。従つて、原審が右第一目録記載の物件に関する部分についてまで被上告人早河としをを除くその余の被上告人らを当事者として審理、判決した旨の論旨は、原判決を正解しない独自の見解にすぎない。しかし、本訴中右第二目録記載の物件に関する部分は、上告人が被上告人らに対し自己および被上告人ら各自の共有持分の確認を求める趣旨のものと解せられるところ、共有者間に共有持分につき争のある場合における共有持分確認訴訟は、自己の共有持分を争われた者がこれを争う者のみを相手として自己の共有持分のみの確認を訴求すれば足りるのであつて、他の共有者に対してその者の共有持分の確認までも求める利益はこれを有しないものというべきであり、従つて、上告人としては被上告人らに対し被上告人ら各自の共有持分の確認を求める訴を提起することは許されないのである。それ故、かかる訴訟が適法であることを前提とし、さらに被上告人ら全員につき合一にのみ確定すべき場合にあたると認めて、被上告人早河としをのみの控訴によりその余の被上告人ら全員につき控訴の効力を生じたとして、右物件に関して右全員につき審理判決した原審は、共有持分確認訴訟ないしは必要的共同訴訟に関する法令の解釈適用を誤つたものというべく、原判決はこの点において破棄を免れない。従つて、論旨は理由がある。

同第五点について。

相続放棄は家庭裁判所がその申述を受理することによりその効力を生ずるものであるが、その性質は私法上の財産法上の法律行為であるから、これにつき民法九五条の規定の適用があることは当然であり(昭和二七年(オ)七四三号・同三〇年九月三〇日第二小法廷判決・裁判集民事一九号七三一頁参照)、従つて、これに反する見解を主張する論旨は理由がなく、また、原審確定の事実関係に照らせば、被上告人早河としをを除くその余の被上告人らの本件相続放棄に関する錯誤は単なる縁由に関するものにすぎなかつた旨の原審の判断は、是認するに足りる。論旨は採用できない。

よつて、原判決中、一、前記第一目録記載の物件に関する部分につき、本件上告は理由がないからこれを棄却し、二、同第二目録記載の物件に関する部分中、(一)、被上告人早河としをを除くその余の被上告人らに関する部分については、原審は右被上告人らの控訴がないにもかかわらず控訴したものとみなして判決しているのであるから、右部分につき原判決を破棄し、(二)、同じく被上告人早河としをに関する部分中、(1)上告人の共有持分確認を求める部分については、原審確定の事実関係に照らせば、上告人が右物件につき二一分の一の共有持分を有することの確認を求める上告人の請求は理由があり、これを認容した第一審判決は相当であるから、右部分につき原判決を破棄して、被上告人早河としをの控訴を棄却し、(2)、被上告人早河としをの共有持分確認を求める部分は、訴の利益なしとしてこれを却下すべきところ、第一審はこれを認容し、原審は右第一審判決を取り消して請求棄却の判決をしているのであるから、右部分につき原判決を破棄し、第一審判決を取り消して、訴を却下すべく、民訴法四〇八条、三九六条、三八四条、三八六条、九六条、九五条、八九条、九二条、九三条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 岩田誠)

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